ChatGPTの登場によって、世の中のAIへの認識はガラリと変わりました。
ただ、AIに持つ感想はさまざまで、
「こんなすごいものがあったんだ!AIってすげえ!」と期待をする人もいれば、
「いま自分たちがやってる仕事ってAIに置き換わるんじゃないか……」と心配になる人もいます。
2015年に行われた野村総研の調査によると、「日本の労働人口の49%が人口知能やロボット等で代替可能になる」とされています。(参考:野村総合研究所)
では、どんな仕事は生き残り、どんな仕事はなくなってしまうのか。
多くの記事では、「医者や教師は残るけど、事務員や店員はいなくなる」といった職種を切り口に紹介されていることが多いです。
しかし本記事では、職種ではなく「生き残る仕事は世界観を作れる」を切り口に解説をします。
具体的には、
- 世界観とは?
- 世界観の作れる仕事って?
- 具体的な仕事は?
などを解説するので、ぜひ参考にしてください。
なお本記事は、山口周さん・水野学さん共著『世界観をつくる』から得た学びをもとに執筆しています。
本記事の内容をより深く知りたい方は、ぜひ一度読んでみてください。
将来なくならない仕事で「世界観」が重要な理由
先述のとおり、本記事では「生き残る仕事は世界観を作れる」をテーマにしています。
とはいえ、世界観という言葉は抽象度が高く、言葉の定義が曖昧です。
そこでまずは、「世界観とは何か」から説明をします。
そもそも世界観とは?
一言で表現するならば、
世界観 = ストーリーがある
です。
わかりやすく、製品を例に解説をしましょう。
たとえばAppleの製品には、世界観があります。
iPhoneにしても、Macにしても、デザインが洗練されていますよね。
ガラケーが主流だった時代、Appleが提案した携帯電話はホームボタン1つの液晶画面でした。
機能を詰め込みすぎてゴツいPCだった時代に、スティーブジョブスは封筒にMacBook Airを入れて製品発表をしました。
スタイリッシュかつシンプル。
Appleの製品にはそんな世界観があるのだと、説明されなくても理解ができます。
月10万円で満たされてしまう世界
ではなぜ、これからの仕事には世界観が必要なのか。
それは”役に立つ”が飽和してしまったからです。
突然ですが、今の自分が最低限幸せでいるために必要なお金は月いくらですか?
僕だったら、10万円前後です。
内訳としては、以下のとおり。
- 家賃:50,000円
- 食費:30,000円
- 本:10,000円
- 衣服:5,000円
- ネット代:5,000円
- サブスク:3,000円
洗濯機、冷蔵庫、スマホ、PCなど、初期費用でお金が必要な場合はありますが、月々の支払いで必要なお金は上記で収まります。
これで十分幸せです。
なにを伝えたいかと言うと、「役に立つ」「これだけは生きていくために必要」というモノに関しては、ほとんどの日本人がすでに持っている状態なんです。
だからこそ、”ただ、役に立つ”というだけじゃ僕たちの心は惹かれない。
「その商品いいんだけど、Amazonで探せば1,000円で買えるよ」
”役に立つ”が飽和した今、そんな状態がこれからも続いていくことは容易に想像できます。
これからは”意味”を欲しがる
”役に立つ”が飽和した時代に何を欲しがるのか。
それが世界観であり、”意味”です。
どういうことか。
iPhoneとAndroidを例に解説をします。
日本のiPhoneのシェア率は69.3%と非常に高く(出典:statcounter)、5人いれば3、4人はiPhoneを持っている計算になります。
ではAndroidよりもiPhoneのほうが機能が優れているか?と聞かれればそんなことはありません。
指紋認証も顔認証も搭載されていながら、iPhoneよりも安いAndroid製品はいくつも発売されています。
イヤホンジャックがないのも不便でしかありません。
それでも僕たちがiPhoneに惹かれてしまう理由は、iPhoneを持つことに意味を見出しているからです。
人によってどんな意味を見出すかはさまざまですが、
- iPhoneを持つことでAndroidよりも気分が上がる
- iPhoneのスタイリッシュなデザインが良い
など、抽象的な理由が購入の動機づけになっています。
この例はiPhoneだけではありません。
一般的な家電よりも高価なバルミューダ、世界観が統一されて美しい無印良品なども、意味を見出され人気が出たモノです。
将来なくならない仕事で意識すべき点は余白があるか
企業単位や製品における世界観の重要性は理解できたと思います。
ではこれが個人の仕事単位で考えるとどうでしょうか。
会社として世界観を作っているところに入社したり、起業して世界観を作ったりすればいいですが、全員がそうなれるわけじゃありません。
だからこそ、個人として世界観を意識した場合の仕事を考える必要があります。
「将来なくならない仕事=世界観を作れる」ならば、世界観を作れる仕事とはどんな仕事なのでしょうか。
僕は”余白のある仕事”は世界観を作れる仕事だと思います。
余白とはつまり、正解がない部分であり、考える余地です。
具体的にいうと、
- どうすれば商品を買ってもらえるのか
- どんな商品を作れば顧客はワクワクするのか
- どんな文章であれば読みたくなるのか
のように自分なりの問いと答えを出せるのが余白になります。
たとえば商品のマーケティングを考えたときに、CMの演出を考えたり、店頭のPOPをデザインしたりするのも世界観作りになります。
逆に余白がない状態とは、指示されたことをそのままやれば良い状態です。
たとえば、
- 指示されたとおりにデザインを作るデザイナー
- 決まったとおりに計算をするだけの経理
- コーディングするだけのエンジニア
などはAIの置き換わりが起きやすいでしょう。
この余白について『世界観をつくる』では、水野さんがデザインの「前」と「後ろ」という言葉で表現しています。
僕はよく、「デザインには前と後ろがある」と言っているんですよ。「後ろ」は、絵を描いたり、形をつくったり、いわゆるデザイナーの仕事だと思われている部分。「前」っているのは、先ほど、僕が依頼を受けてから最も時間を割くと話した部分です。
アウトプット、デザインの「後」の部分は、AIがやれてしまう。でもデザインの前の部分、この部分を狙ってこういう世界観をつくろうと決めていくプロセスは、AIにはまだ難しいかもしれない。そこが、自分がやり続ける意義だと思っています。
引用:『世界観をつくる』
水野さんはデザインについて話をしていますが、どんな職種であっても「前」と「後ろ」があって、前の部分が余白であり、仕事の価値だと僕も考えます。
将来なくならない仕事で必要性が増す職種の具体例
「将来なくならない仕事=世界観を作れる」としたときに、必要性が増す具体的な職種をいくつか紹介します。
将来なくならない仕事で必要性が増す職種
- クリエイティブディレクター
- デザイナー
- 営業
順番に解説します
1. クリエイティブディレクター
クリエイティブディレクターとは、制作物の総監督をするポジションです。
クライアントの商品・サービスの全体設計をすることもあれば、自社商品の全体設計をすることもあります。
クリエイティブディレクターの場合は、世界観の初期設計から関わることが多いため、今後も需要は増していくでしょう。
2. デザイナー
ここで示すデザイナーとは、指示されたとおりにデザインをするデザイナーではありません。
これから重宝されるデザイナーは、クライアントからの要望を言語化してクリエイティブに落とし込んだり、ターゲットにあわせて適切な表現ができたりする人物です。
なぜなら単にデザインをするだけなら、AIに代わってしまう可能性が高いから。
先ほどの水野さんの言葉を借りるなら、デザインの「前」ができるデザイナーは必要度が増すでしょう。
3. 営業
営業の役目は、世界観の翻訳です。
Apple製品のように強烈なプロダクトであれば営業を行わなくても、お客さんが自ら製品を求めるでしょう。
しかし一般的なプロダクトは、世界観を伝える営業が必要です。
だからこそ、今後も営業の必要性は増すと考えられます。
なかでも重宝される営業は、お客さんごとに適切な世界観の翻訳ができる人でしょう。
たとえば家を販売するときも、
- 4人家族の場合:それぞれの部屋があること、近くに公園もあることをアピール
- 30代夫婦の場合:広々としたリビングで居心地の良さをアピール
のように、お客さんによってアピールの仕方が異なります。
「どんな世界観が最適か」をお客さんごとに考え、言語化できる営業は、AIに取って代わられない人材になるはずです。
将来なくならない仕事の鍵は「世界観」である
以上、本記事では将来なくならない仕事の鍵として「世界観」が重要であることを解説しました。
世界観とは、ストーリーです。
役立つ商品が飽和した今、これから必要になるのは意味のある商品になります。
「この製品を使う毎日はワクワクする」「このサービスを使っている自分が好き」
そんな世界観を演出できるiPhoneやバルミューダのような商品は、市場をリードしています。
商品作りに関わる仕事ではなかったとしても、自分の仕事で世界観を作る余白があるかどうかを考えてみてください。
世界観を作る余白とは、
- 商品を売るために工夫できること
- 文章を読んでもらうために工夫できること
- 経営数字から想像できる今後の打ち手
などが該当します。
きっと多くの仕事に余白があり、世界観を作る余地があるはずです。
まずは自分の仕事から、世界観を作っていきましょう。